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【私の研究の概要】
人間の乳幼児の発達は目覚ましく、生後わずか 2 年で一人歩きができるようになり、簡単な言葉もしゃべれるようになります。その間、乳幼児は一人遊びや親とのやり取りを通じていろいろなことを覚えていきます。人間の乳幼児と同じように、ロボットも経験から行動や知識を獲得することを目標とした研究が近年は盛んに行われています。このような研究分野は認知発達ロボティクスと呼ばれ、 人間のような知覚・行動生成機構の実現に加え、ロボットを通じて「人間」を理解することも目標としています。
私も認知発達ロボティクスの一端を担っています。特に幼児の一人遊び(積み木など)を対象としており、これまでは主に基礎実験に取り組んできました。幼児は一人遊びを通じて、自身の行動とそれが与える環境への変化の関係を学習していきます。それがさらに発達し、環境内の物体を道具として使用する能力も獲得します。私の研究ではロボットの知覚・行動モデルを構築し、実際のロボットで学習・解析することでロボットがどのような知識を獲得したかを検証しています。発達的なロボットの実現を目指すと共に、「人間」の理解にも通じる研究をしていきたいと考えています。
研究室の学生 3 名と実験用ロボットと筆者(右から 2 番目)
【研究室の生活】
私の所属する研究室では教授 1 名、准教授 1 名、私を含む助教 3 名に加え、約 20 名の学生と共に研究活動に勤しんでいます。研究室の研究体制はロボット聴覚グループ、音楽情報処理グループ、そして私が所属するロボットインタラクショングループの三つから成っています。ロボットインタラクショングループは准教授の尾形哲也先生、学生 5 名と私の計 7 人で構成されています。グループの研究目的は、上記のように、ロボットによる実験を通じた構成論的な人間の理解です。
研究室での生活としては週ごとのグループ内ミーティング、研究室全体ミーティング、研究会があります。研究会では学生が順に自身の研究内容を紹介し、それについて教員・学生全員で議論をします。グループ内・グループ外、 両方の研究内容について議論ができ、様々な視点から研究を見つめることを目的としています。
【若手ロボット研究者ネットワーク HUROBINT】
私は日本ロボット学会の研究専門委員会 HUROBINTの実行委員をしています。これは日本の若手ロボット研究者グループであり、委員会活動を通じて国内外問わず様々なロボット研究者と交流しています。構成員は主に助教、 研究員、学生であり、所属も関東・関西・九州の大学や高等専門学校とネットワークは日本全国に広がりつつあります。
日本国内での活動としては、ワークショップ開催による他ロボット研究者との議論、そしてロボット学会の学術講演会でセッションの企画と活動報告をしています。海外の研究者との交流として、これまではアメリカのマサチューセッツ工科大学 (MIT)、スイスのチューリッヒ大学、韓国の科学技術研究所 (KIST) と韓国工業技術院 (KAITEC) などと合同ワークショップを開催してきました。これにより、海外の研究動向の調査と共に自身の研究を海外に発信することもでき、さらに海外の研究者とのネットワークも構築しています。HUROBINT の活動は今後も世界中に広げていく予定であり、私も積極的に活動に参加していきたいと思っています。
【白眉の研究者として】
白眉プロジェクトの活動の一つである隔週の白眉セミナーでは、白眉研究者が研究発表をし、他の白眉研究者やその他の参加者と議論をします。白眉セミナーの参加者は主に分野外の研究者であり、異なった視点からの質問も多数出て、新しい考え方が発現することもあります。 上記の HUROBINT の活動と白眉セミナーを通じて、今後もより広い視野から研究を進めていきたいと思っています。
私は研究者とはよい教育者でもあるべきだと思っています。そのため、私は研究だけではなく、大学の講義、学生の研究サポートなどにも注力しています。今後も研究のみならず、教育や研究者の交流などの活動にも参加し、自分を磨いていきたいと考えています。
(にしで しゅん)