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京都大学吉田南キャンパスは陽気な学生たちの活気にあふれています。私の新しい居室は、人通りの多い通路の真上にあって、4月には初々しかった1回生の会話が、だんだんと京大生らしい馬鹿話へと変遷していくのを楽しんでいます。
人間・環境学研究科(総合人間学部)の助教としての重要なしごとが、学生実習の担当です。全学向けの生物学実習を担当していますが、これは私自身が学生だった頃に最も影響を受けた講義であるだ
けに、とても思い入れがあります。
同実習には、毎年、京大生としてもかなり濃い学生たちが集結してきます。小学生の頃からキノコ図鑑を熟読していて、「その菌の胞子は原色図鑑上巻の○ページに載っています」と私の知識の不備を指摘してくれる学生もいれば、クラゲが好きすぎて、船舶免許をとって自分で採集に行ってしまう人もいます。こうした学生たちが持っている探究心と可能性が、素直に伸びていく環境をそれとなく整えておくこと。これが難しいけれどもやりがいがある教員としての役割だと考えています。
末端で学生たちと関わる教員の一人としてどうあるべきか、ときに深く悩むことがあります。「人材」という言葉によく出会うようになってきました。学生たちを何らかの目的のための「材」として扱うかのような昨今の風潮には、直に学生たちと接する教員として、根本的な部分で違和感を覚えます。
未来は若い世代が主体的な知性と底抜けの明るさで手にするもの。時代を超えて受け継がれるべき学問と教育の哲学を、この吉田南キャンパスでじっくりと探求していけたらと思います。
学生実習のひとこま。
(とうじゅ ひろかず)