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私は白眉の後、医学研究科の寄附講座である発達障害支援医学講座に移りました。講義や事務はありますが、研究がメインの仕事です。白眉時代とそれほど変わらず、楽しい日々を送っています。
研究活動として、白眉の間に集めたデータを論文化したり、白眉のときに得た着想で実験したりしています。思えば白眉時代は、自由な時間を生かして論文や本を読みふけり、多様な研究者と議論して発想を広げ、すばらしい実験環境をいただいて山ほどデータを取らせていただきました。視野を広げて混ぜ合わせたぶん題材は新しいことばかりで、扱うのが大変ですが面白いです。例えば、私の研究内容は感情コミュニケーションの心理学・神経科学研究といったものだったのですが、伏木元センター長の研究に共通点を見出してコラボレーションをお願いし、食物を刺激として実験しました。食物が我々の感情を無意識のうちに刺激していることが分かり、驚きました。また白眉セミナーで聞く哲学や宗教の話は人生に深い示唆があると感じ、自分もそうした研究ができればと、幸福の神経基盤を調べて発表しました。科学的なアプローチで初期仏典と共通する主張にたどり着き、愉快に感じました。白眉の物理学者たちの高度な数学を用いたアプローチにも憧れ、自分も解析を洗練させようと取りくみ、執筆中の顔処理の神経科学の原稿では人生で初めて微分方程式を書きました。
研究の他、最近は武術の修行に励んでいます。運動不足でなまった身体をメンテナンスくらいの軽い気持ちで始めたのですが、年上や同年代でがんばる仲間達と出会って刺激を受け、骨を折ったり折られたりしながら予想外にハードな修行に取り組んでいます。元気になりました。
また定期的に、家族とお出かけしています。大成果を出しながら家族を大事にする白眉の同輩を見習いました。子供の世話は普段ほとんどできていないのですが、お出かけのときくらいはと、企画したり運転したり真剣に遊んだりしております。ポジティブ感情のエネルギーを充填できます。
こうしてコツコツ研究する日々の中、ポスト白眉研究者として少しでも意義ある成果を発表できればと思います。
家族と天橋立にて。
(さとう わたる)