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白眉プロジェクトに入ったときには、正直、「全く分野の違う研究者といったい何を話したらいいのだろう?」と思っていました。しかしながら2週間ごとの白眉セミナーで全く知らない研究分野の話を聞くたびに、自分の枠が外れて世界がどんどん広がっていくのを実感しました。白眉セミナーで私が得たものは知識ではなく、それぞれの分野の世界観や情熱を共有する喜びだったのかもしれません。そうして1年が経った頃、私にとって白眉研究者仲間のつながりはなくてはならないものになっていました。
昨年10月より、思いがけず、医学研究科の腎臓内科学という新しい講座を主宰することになりました。腎臓内科学講座には外来診療と入院患者さんの診療に加えて、日本有数の透析室を運営管理するという重要な役割があります。学生さんの病院実習や講義、研修医の教育も重要な仕事です。新しい講座だけに同門会や医局もなく、勧誘や人事などなれない仕事も山積しています。研究中心だった生活は一変し、生活の90%を臨床診療と講座運営が占める日々が始まりました。これまで私の本業であった研究室のメンバーにあえるのは夜9時以降ですが、彼らはボス不在の日中に知恵を絞って実験してくれており、自分が育てたはずの学生たちにしっかりと支えられていることを実感しています。
研究室のメンバーと(中央手前が筆者)
忙しいといえば忙しいですが、さまざまな人に会い、話を聞き、協力しあって新しい講座を創り上げていくのはとても大きな喜びです。病院長の先生や他科の教授からは立ち上げに必要な知恵や惜しみないご援助、ご支援をいただいていますし、腎臓内科が診療科であった時のスタッフは全員残って新しい講座に力を貸してくれています。機会に恵まれ、環境に恵まれ、人に恵まれたことを日々実感し、感謝しています。
それでも、専門外の分野についてゆったりと語り合ったあの時間はもう持てないのだと思うと寂しくなります。そんな時に慰めになるのは、卒業生を巻き込んだ飲み会「白髪プロジェクト」です。早くも5回開催されていますが、今後も万難を排して出席したいとおもっています。
(やなぎた ともこ)