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現在私が勤務している近畿大学文芸学部文化・歴史学科では、2012年度より「文化資源学」が新しく設置されています。文化資源学は、まだ広く認識されていませんが、2000年以降東京大学や金沢大学、島根県立大学など全国数か所の大学に設置されるようになった新しい研究領域です。2002年には「文化資源学会」が設立されました。
それでは、文化資源学とは、いかなる学問でしょうか。 一般的に「文化資源学は、史料、建築、景観、芸能など有形無形のものの受け継がれてきた文化を資源として見直す仕方を学び、現代の社会文化に活かす方法を探究する分野」と紹介されています。私は学部生向けの授業で、より具体性を持たせるために、3つのキーワードから文化資源の特徴を解説しています。
①「不完全性」:地域のご当地マスコット(ゆるキャラ)は、 従来のプロ的作品に比べてアマ的作品の不完全性が親しみやすさを生みだし、現代の双方向的コミュニケーションのあり方を投影する文化資源になっています。
②「人間性」:採算性や効率性が厳しく問われる時代のなかで、あえて「無人化/機械化」でなく「有人化」することで乗客の満足度を向上させた過疎地域の鉄道会社の事例からは、人間ならではのきめ細かいヒューマンパワーが文化資源になることがわかります。
③「多様性」:世界遺産に認定された地域では自治体や観光産業のキャンペーンにより観光客が集まる一方、地域住民の平穏な生活を奪っている側面があるように、多様なアクターによって文化資源は構成されていることを認識する必要があります。
まだ発展途上で手探りの段階ですが、人文・社会科学の視点から文化資源の意義を考えることは、現代の山積する地域問題を解決するうえで一つの足掛かりになると期待しています。
(むらた ようへい)