シリーズ白眉対談02 宇宙(2012)
宇宙関係の諸分野
(司会) 色んな分野の立場が少し分かってきたので、ここでそれを整理しつつ、宇宙関係の分野について非専門家向けに説明をお願いします。
(信川) どういうふうにまとめたらいいですかねぇ。
(司会) たとえば、宇宙関係の大きい学会はどんなのがありますか?この 4 人でだいたい全部カバーできるのか、とか。
(信川) じゃあ、まず所属してる学会を言いますか。
(長尾) ぼくは日本天文学会、以上です。
(信川) ぼくも日本天文学会、以上ですねぇ。
(長尾) あれ、そうなんですか。
(信川) エックス線の研究者の中には物理学会は入っている人もいるんですけど、ぼくは入ってないですね。
(村主) ぼくも日本天文学会だけですね。
(小林) ぼくは日本物理学会だけですね。(一同) おー(笑)。
(司会) はっきり分かれたというか、2 個しか出てこなかったというか。
(村主) 惑星物理学会っていうのもあるよね。
(信川) 明確な分野の違いとして、太陽系内と太陽系の外っていうのは分かれていると思いますね。
(長尾) 太陽系の中、頑張ったら行けますからね。ちゃんとサンプル取って来るとか。でも隣の恒星とか言い出すと、もうとたんに無理ですからねぇ。
(小林) そうですねぇ。
(信川) ぼくのやっている分野では天文学会と物理学会と両方に入っている人も多いんですよ。その違いは、一つは扱う現象のエネルギーが高くなると物理学会で、それほど高くなければ天文学会に行くという傾向はあります。
(長尾) ありますねぇ。エックス線よりもっとエネルギー高くなってガンマ線とかになったら、間違いなく物理学会ですよね。
(信川) エックス線は天文学会だけれども、 ガンマ線になると物理学会に行くという・・・。
(司会) そしたら、学会分けの基準としては、 太陽系の内外というのと、エネルギーの高低というのと・・・あと他にもあります?理論と実験とか。
(長尾) 理論と実験の違いは大きいけど、学会を分けるときにはあんまり関係ないですよね。
(信川) 関係ないです。どの学会にも理論と実験の両方がある。
(小林) たとえば、天文学会にも宇宙論セッションというのがあります。
(司会) 観測装置を作ったり実際に衛星とかを飛ばしたりするような、工学系の人たちとのリンクっていうのは?
(長尾) それは非常に密接ですね。たとえば望遠鏡の検出器の読み出し回路の設計とか、 詳細な観測技術に関することは日本天文学会の中で、望遠鏡を使う人と一緒に議論しながらやっているという感じですね。
(司会) 村主さんは主にどこで発表されるんですか?
(村主) たとえば惑星のシミュレーションをしたら惑星のところで話すし、星間物質のシミュレーションをしたら星間物質のところで話しますねぇ。
(長尾) 情報関係の学会に入られてないんですか?
(村主) 今年は関数型言語の国際会議に行ってきましたよ。
(信川) 関数型?
(村主) 関数型プログラミング言語。ずっと昔からあるのだけど、ここ 2、3 年の進歩も凄まじいです。本誌第 2 号で少し解説を書きました。
選んだきっかけ
(司会) 宇宙関係にも色んな分野があるということですが、何がきっかけで皆さんは研究分野を選ばれたのか、たとえば幼少期の経験とか中高の先生との出会いとか、何かあれば教えてください。

(長尾) ぼく、実は学部生のときには、重力波天文学を最初やりたかったんですよ。(一同) ほぉ。
(長尾) だから物理寄りですよねぇ。あんまり物理もできなかったくせに。で、卒業研究は一般相対性理論の研究室にちょっと行ったんですよ。
(小林) あっ、へぇ。そうだったんですか。
(長尾) そうすると、難しすぎて、これは無理だなぁって思って。でも周りにはもっと現象論寄りで銀河やブラックホールを研究されている方もたくさんおられて、そういう先生たちと話している中でそういう研究も面白そうかなぁって思うようになりました。ちょっとそういうところにも潜り込ませてもらって、ゼミとか混ぜてもらっているうちに、だんだんとそっちやるようになった感じですかねぇ。
(司会) そうですか。長尾さんにとっては、 物理はちょっと難しかったと・・・。
(長尾) そうですねぇ。
(司会) 逆に物理の方が簡単だと思えて物理をやっているという人もいるかも・・・。
(長尾) そうでしょうね。たぶん、物理の方で天文は難しいよって言う方が、どこを難しいと思われるかって言うと、天文のぐちゃぐちゃしてるところですね。基本原理が見えにくいっていうか、そういうところが物理の方からすると敷居が高く感じるっていうのは、 よく聞くんですよね。一方で、統一的な理論がよく分からない中で色んなものがあって、 きれいなものがあったり、ぐちゃぐちゃした形のものがあったり、という博物学的な側面を面白いという人もいて、そのへんは何を楽しいかって思うかというセンスで変わってきますねぇ。
(小林) すごく同意しますね、それは。
(信川) ぼくは、難しさで言うと、物理と天文の難しさはそんなに違わないと思いましたね。ぼくは学部では最初物理を主に勉強していて、ずっと物理やろうと思ってたんですけど、物理の何を対象にしようかというところで、宇宙を選んだ。で、宇宙は、まあ子供のときから宇宙は好きだったというのがあって。 ブラックホールはとてもインパクトが強いものでしたし・・・。
(司会) そうですよね。
(信川) ぼくは宇宙観測から宇宙でどういう現象が起きているのかということを研究しています。現在、エックス線を使った観測をしていますが、それは自分の進んだ先にそういう分野があったからなんです。実は特に分野を選んだ強い根拠はないです。
(司会) そうですか。
(信川) 理論よりは観測をやりたいなと。新しい観測装置は新しい宇宙を見せてくれると思っているので、自分で観測装置を作って宇宙を見ていきたいなぁ、というのがモチベーションの一番ですねぇ。
(村主) ぼくは、子供の頃から SF を読んだりゲームをしたり、高校生・中学生向けの本を読んだり。何と言うのかなぁ、興味はどっちかと言うと、理学全体でしたかねぇ。論理学に基づく自然数の作り方というのも勉強したし。大学へ進学するときは、悩んだこともあったんですけど、理学部に入るというのまでは決めてた。次に大学院入試の年になって、 どこに行けばいいか分からなかったんだけど、 京大に天体核研究室というのがあって、そこで宇宙物理でシミュレーションをされている先生がいらっしゃるというので、そこにしようかなぁっと決めました。
(小林) ぼくは中学・高校では、ものすごく数学が好きで、ほんとに数学ばっかりやっていた。京大の理学部入ったら 3 回生まで物理か数学かを決めなくていいので、どちらかをやろうと思って入りました。入ってからの授業も物理よりも数学の方に結構興味があったので、数学ばっかり出ていて、でもどうやっても数学の人と友達になれなくて・・・。(一同)(笑)
(長尾) どういうことや!(笑)
(小林) なんかこう、ちょっと話しかけづらいというか(笑)。しかも、ものすごくみんな頭がよくて、これはかなわんと。だから 3 回生で課題演習を選ぶときは物理にした。でもやっぱり数学が好きで、物理の中で数学っぽい分野って何だろうと思って、すぐ思いついたのは一般相対論。じゃあ一般相対論を一番使うのは何だろうと思って、それはやっぱりブラックホールや宇宙全体の研究なので、自然とそういう方向に行って。もちろん実験とかも課題演習でやらされたんですけど、色んな細かいことに気を遣うのがどうしてもだめで。 まあ数学も結構繊細なところがあると思うんですが。でも、ぼくは結構いい加減な人間なんで、たとえば、極限と積分の交換を、それをしていい条件を気にせずにやりたいんです。 そうするとぼくに馴染むのは比較的数学を使う物理の分野で、そこに行こうと思ったんですね。