潮 雅之 (2024)
第9期 特定准教授(生態学研究センター)2018年10月1日〜2022年8月31日 在職
香港科技大学海洋学科 2022年9月1日~現職
香港の海でイルカを探す
白眉センターで4年弱お世話になり、縁あって2022 年9 月から香港科技大学の海洋学科で教育研究に精を出しています。白眉センターに採用いただいた際には、まさかその4年後に香港で研究室を運営しているとは夢にも思っていませんでした。さらに言えば、大学院時代にボルネオ島の熱帯雨林の研究からこの世界に入って、その後日本のフィールドをメインに研究し、いつの間にか香港の海を研究することになるとは、縁というかタイミングというか、色々と制御できないものに動かされてここにいるなあ、と思っています。

香港に来た当初は研究上の人脈があまりなく(実は白眉同期の平野さんが違う学科に先に着任しておられましたが)、香港の大学事情も分かっていなかったので、文字通り手探りの状態で研究室の立ち上げを開始しました。最初の1年は就労関係の書類・保険・ビザ・税金・研究費など、毎日初めてみる書類やルールの理解・確認に大量の時間を費やしていました。2年目からは授業が本格的に始まりましたがこちらも初めてのことだらけで準備には想像以上に時間を費やしました。


研究に関しては「海洋学科所属」という縛りの下、どんなテーマをメインにして生態学研究を進めるか、しばらく悩んでいました。ネットで情報を調べたり、いくつか現場を回っているうちに、香港にはピンクのイルカがいて、人気者かつ保全対象種であることを知り、このイルカのモニタリングに自分の専門である環境DNA の技術が有効ではないか、と思いつきました。つまり、採水だけして、その中のDNA を調べて周辺にいるイルカの個体数・生理状態・分布などを推定することができれば、非侵襲的な方法でイルカの保全に貢献する情報が得られる、と考えたわけです。この分野で研究している人からすればシンプルな発想でしたが、本格的に手を付けている人が多くないこともあり、1年目は苦労したものの、最近になって2つの研究費を獲得できました。また、香港3年目に入るに当たり研究室の大学院生も5人に増え、このプロジェクトは本格的に走り出しています。
異国での研究室立ち上げにはやはり苦戦しました(しています)が、得難い経験を日々得られていると感じます。ここからはようやく成果が出始めるフェーズに入るはずです。これからも楽しんで教育研究を続けていきたいと思っています。
