第3回白眉シンポジウム「邂逅の作用反作用:歴史・ 芸術・フィールドの視角から」(2016年1月25日/小石かつら・和田郁子)
2016年1月25日(月)(13:00 – 17:00)、京都大学芝蘭会館山内ホールにおいて、第3回白眉シンポジウムを開催しました。「邂逅」および「作用反作用」という2つの言葉をキーワードに据え、人間とはどういうものか、人間はどのような社会をつくってきたのかを考え、議論の場をつくることが、今回のシンポジウムの目的でした。
プログラムは、王柳蘭氏(4期)による「タイに生きる中国系ムスリムの葛藤とさまざまなイスラーム」で始まり、つづいて長崎大学多文化社会学部准教授・鈴木英明氏が「フィールドと文献を往復する:インド洋海域史の歩き方」の題目で発表されました。さらに和田郁子(5期)による「近世インド・港町の『オランダ』人社会に生きた女性たち」の報告後、休憩を挟んで、小石かつら(3期)による「改宗ユダヤ教徒としてのメンデルスゾーンとドイツ祝典音楽」、ジェニファー・コーツ氏(5期)による「李香蘭・山口淑子・シャーリー=ヤマグチ:時空を超える邂逅」の2つの報告が行われました。総合討論では、個々の報告への質問に加え、全体のテーマに関わる発言も出され、司会の中西竜也氏(3期)が指名に困るほど盛り上がり、予定されていた1時間は熱い議論のうちに終了しました。
記録的な大寒波にもかかわらず、当日の会場は60名近い参加者で大盛況となりました。他方で、前日より西日本を見舞った暴風雪のため、とりわけ九州では交通網が完全に麻痺していました。飛行機は24日から25日にかけて多数の便が欠航し、陸路も新幹線はもとより在来線も運休、高速道路も通行止めとなるなか、ゲストスピーカーの鈴木氏が長崎から一歩も出られないという緊急事態(!)に陥り、やむを得ず、電気通信技術を駆使したシンポジウムとなりました(それはそれで見応えがありましたが)。
今回は邂逅がキーワードでしたが、これにはさまざまな捉え方があると考えられます。人と人との出会い、新たな思想や制度との出合い、未知のものとの出合い。それらを経験した人が作り出すさまざまな作品。それらの作品を資料として研究に取り組む研究者。その多様な、しかし基本的に一回性のものである邂逅が、何を生みだし、どのようなうねりをもたらすのか。邂逅から引き起こされるダイナミックな作用反作用について、今後も議論の発展がおおいに期待されるところです。



(こいし かつら・わだ いくこ)