2015 年度年次報告会(2016年4月19日/林眞理)
2016年4月19日、京都大学芝蘭会館にて2015年度白眉年次報告会が開催された。本報告会でのテーマは、「研究の原点とは:自然を問う理系、人間を問う文系」。社会の変遷が目まぐるしい昨今において、自身の研究の原点を今一度みんなで見つめ直そうという企画であった。もちろん公的な資金援助を受けている研究ほど、社会への還元が必要であるという議論には一定の説得力がある。しかし一方で、研究者自身の知的好奇心によって裏打ちされている研究は、例え短期的な成果を得ることが難しくとも、純粋に魅力的である。そのような観点から3名の白眉研究者、及び2名の招待演者による講演が行われた。
白眉研究者のセッションでは、5期の越川滋行特定助教による「模様ができる仕組みとその意味」、4期の西本希呼特定助教による「無文字社会の今と昔」、5期の鈴木咲衣特定助教による「考える原点—理論と現実の狭間でー」、という非常に興味深いタイトルでの3演題が行われた。白眉らしく、非常に多岐に渡る分野からの発表であったが、それぞれの演者が、「研究の原点」というキーワードを思い思いの方法論で表現していた。
その後のポスターセッションでは全白眉研究者がポスター発表を行った。普段は目にする機会の少ない他分野の研究にそれぞれの研究者達が耳を傾けていた。昨年に引き続き、聴衆からの投票によるポスター賞の選定が行われ、自然科学系から6期の榎戸輝揚特定准教授、生物科学系から6期の加賀谷勝史特定助教、そして人文科学系からは6期の上峯篤史特定助教と4期の置田清和特定助教の計4名が受賞した。受賞者からは丹精を込めてポスターを作った甲斐があったとの声も聞かれた。
招待講演では、大阪経済大学経済学部准教授の鈴木隆芳氏が「ものこころことば–<切る>の哲学–」というタイトルで、哲学的世界観の表出を目指した意欲的な講演を行った。また京都大学大学院人間環境学研究科教授の石川尚人氏による講演「地球科学との出会い」では、如何にして古地磁気学に惹かれていったかを振り返りつつ、今もその魅力の虜となっていることがありありと伝わってくる発表であった。まだ若手の研究者が多い中で、比較的シニアの研究者の研究とその原点に触れる機会となり、お互いに良い刺激となったのではないだろうか。


(はやし まこと)